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【kindle电子书分享】东野圭吾日文原版书全集(mobi格式)

慧行说
2015-03-08 / 2 评论 / 0 点赞 / 661 阅读 / 5,700 字 / 正在检测是否收录...
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著者紹介:東野圭吾(ひがしの?けいご) 1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞。著書に「同級生」「変身」「分身」「鳥人計画」「むかし僕が死んだ家」「パラレルワールド?ラブストーリー」「天空の蜂」「毒笑小説」「名探偵の掟」「悪意」「白夜行」「予知夢」「片想い」「超?殺人事件」「レイクサイド」「手紙」等があり、幅広い作風で活躍している。

[東野圭吾] __レイクサイド

汚れた綿のような雲が前方の空に浮かんでいた。雲の隙間すきまには鮮やかな青色が見える。  並木なみき俊介しゅんすけは左手をハンドルから離し、右の肩を揉もんだ。さらにハンドルを持つ手を替え、左肩を揉む。最後に首を左右に振るとポキポキと音がした。  彼の運転するシーマは、中央自動車道の右側車線を、制限時速よりちょうど二十キロオーバーで走っている。ラジオからはお盆の帰省による渋滞情報が流れていた。例年に比べてどこも渋滞は少ないという意味のことを伝えている。  高速道路を下り、料金所を出たところで携帯電話を取り出した。信号待ちの間に、登録してある番号の一つを選んだ。登録名が『ET』というものだった。  かけてみたが、相手の電話は留守番電話サービスに切り替わった。彼は舌打ちをし、携帯電話を。ズボンのポケットに戻した。

[東野圭吾] __白夜行

近鉄布施ふせ駅を出て、線路脇を西に向かって歩きだした。十月だというのにひどく蒸し暑い。そのくせ地面は乾いていて、トラックが勢いよく通り過ぎると、その拍子に砂埃すなぼこりが目に入りそうになった。顔をしかめ目元をこすった。  笹垣ささがき潤三じゅんぞうの足取りは、決して軽いとはいえなかった。本来ならば今日は非番のはずだった。久しぶりに、のんびり読書でもしようと思っていた。今日のために、松本清張の新作を読まないでいたのだ。  右側に公園が見えてきた。三角ベースの野球なら、同時に二つの試合ができそうな広さだ。ジャングルジム、ブランコ、滑り台といった定番の遊戯設備もある。このあたりの公園の中では一番大きい。真澄ますみ公園というのが正式名称である。  その公園の向こうに七階建てのビルが建っている。一見したところでは、何の変哲もない建物だ。だがその中が殆ほとんどがらんどうの状態であることを笹垣は知っている。府警本部に配属される前まで、彼はこの付近を管轄する西布施警察署にいた。  ビルの前には早くも野次馬が群がっていた。彼等に囲まれるように、パトカーが数台止まっているのが見えた。

[東野圭吾] __赤い指

間もなく夕食という時になって、隆正たかまさはさっきのカステラが食べたいといいだした。松宮まつみやが土産に持ってきたものだ。 「こんな時間に食べてもいいのかい」松宮は紙袋を持ち上げながら訊いた。

「かまうもんか。腹が減ったら食べる、それが身体には一番いいんだ」 「知らないぜ、看護婦さんに叱られてもさあ」そういいながらも年老いた伯父が食欲を示してくれたことが、松宮はうれしかった。  紙袋から箱を取り出し、蓋ふたを開けた。一口サイズのカステラが一つ一つ包装されている。その一つの包装をはがし、松宮は隆正のやせ衰えた手に渡した。

隆正はもう一方の手で枕を動かし、首を立てようとした。松宮はそれを手伝った。  ふつうの大人なら二口ほどで食べ終えてしまうカステラを、隆正はたっぷりと時間をかけ、少しずつ口に入れていった。飲み下す時がやや辛そうだが、甘い味を楽しんでいるようには見える。 「お茶は?」 「うん、もらおう」  そばのワゴンの上に載っていたペットボトルを松宮は隆正に渡した。それにはストローが差し込まれている。隆正は寝たままで器用に飲んだ。

[東野圭吾] __幻夜

薄暗い工場の中に工作機械の黒い影が並んでいる。その様子は雅也まさやに夜の墓場を想起させた。もっとも、親父が入れる墓はこれほど立派なものじゃないがとも思った。黒い影たちは主を失った忠実な召使いのようにも見えた。彼等はたしかに雅也と同じ思いで、しめやかにこの夜を迎えているのかもしれなかった。  湯飲み茶碗に入った酒を彼は口元に運んだ。茶碗の縁がわずかに欠けていて、それが唇に当たる。飲み干した後、ため息をついた。  横から一升瓶が出てきて、彼の空いた茶碗に酒が注がれた。 「これからいろいろと大変やろうけど、まあ気い落とさんとがんばれや」叔父の俊郎としろうがいった。顎を包むように生えた髭には白いものが混じっている。顔は赤く、吐く息は熟れた柿の臭においがした。

「おっちゃんにも、何かと世話になったな」心では全く思っていないことを雅也はいった。 「いや、そんなことはええ。それより、これからどうするのかなと思てな。まああんたは腕を持ってるから仕事に困ることはないやろうけど。西宮にしのみやの工場で雇てもらうことになったそうやな」 「臨時雇いや」 「臨時でもええがな。今の時代、働き口があるだけましや」俊郎は雅也の肩を軽く叩いた。そんなふうに触られるのさえ不快だったが、愛想笑いを返しておいた。

[東野圭吾] __秘密

予感めいたものなど、何ひとつなかった。  この日夜勤明けで、午前八時ちょうどに帰宅した平介は、四畳半の和室に入るなりテレビのスイッチを入れた。しかしそれは昨日の大相撲の結果を知りたかったからにほかならなかった。今年四十歳になる平介は、これまでの三十九年余りがそうであったように、今日もまた平凡で穏やかな一日になるに違いないと信じていた。いや信じるというより、それはもう彼にとって既定の事実だった。ピラミッドよりも動かしがたいものだった。  だからテレビのチャンネルを合わせている時も、画面から自分が驚くようなニュースが流れてくることなど予想していなかったし、仮に世間を騒がせるような事件が起きていたにしても、それは自分とは直接関係のないものだと決めてかかっていた。  彼は夜勤明けには必ず見る番組にチャンネルを合わせた。芸能界のスキャンダルやスポーツの結果、昨日起こった事件などを、浅く広く教えてくれる番組だった。司会を務めているのは、主婦に人気のあるフリーのアナウンサーだ。人のいいおじさんといった風貌のその司会者が、平介は嫌いではなかった。

[東野圭吾] __容疑者Xの献身

午前七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。三月に入ったとはいえ、まだ風はかなり冷たい。マフラーに顎あごを埋めるようにして歩きだした。通りに出る前に、ちらりと自転車置き場に目を向けた。そこには数台並んでいたが、彼が気にかけている緑色の自転車はなかった。  南に二十メートルほど歩いたところで、太い道路に出た。新大橋通りだ。左に、つまり東へ進めば江戸川区に向かい、西へ行けば日本橋に出る。日本橋の手前には隅田川があり、それを渡るのが新大橋だ。  石神の職場へ行くには、このまま真っ直ぐ南下するのが最短だ。数百メートル行けば、清澄庭園という公園に突き当たる。その手前にある私立高校が彼の職場だった。つまり彼は教師だった。数学を教えている。  石神は目の前の信号が赤になるのを見て、右に曲がった。新大橋に向かって歩いた。向かい風が彼のコートをはためかせた。彼は両手をポケットに突っ込み、身体をやや前屈みにして足を送りだした。  厚い雲が空を覆おおっていた。その色を反射させ、隅田川も濁った色に見えた。小さな船が上流に向かって進んでいく。それを眺めながら石神は新大橋を渡った。  橋を渡ると、彼は袂たもとにある階段を下りていった。橋の下をくぐり、隅田川に沿って歩き始めた。川の両側には遊歩道が作られている。もっとも、家族連れやカップルが散歩を楽しむのは、この先の清洲橋あたりからで、新大橋の近くには休日でもあまり人が近寄らない。その理由はこの場所に来てみればすぐにわかる。青いビニールシートに覆われたホームレスたちの住まいが、ずらりと並んでいるからだ。すぐ上を高速道路が通っているので、風雨から逃れるためにもこの場所はちょうどいいのかもしれない。その証拠に、川の反対側には青い小屋など一つもない。もちろん、彼等なりに集団を形成しておいたほうが何かと都合がいい、という事情もあるのだろう。

[東野圭吾] __殺人の門

人の死を初めて意識したのは小学校五年の時だ。正月が終わり、三学期が始まって間もなくの頃だったと思う。私にその体験を与えてくれたのは祖母だ。その時は彼女の正確な年齢を把握していなかったが、後に両親らから聞いたところでは、七十歳になったばかりだったらしい。  私が生まれ育った家は、当時としても古い日本家屋だった。玄関を入ると正面に長い廊下があり、その廊下を挟むように和室が並んでいた。一番奥は台所だった。当時はまだ土間であったから、食事の支度をするのにも履き物が必要だった。流し台の脇に勝手口があり、近所の酒屋や米屋が、よく御用聞きに来たものだ。  台所の手前を右に曲がると、庭に建てられた離れへ続く廊下になっていた。その離れが祖母の部屋だった。わりと広かったように記憶しているが、それは私が子供だったからだろう。小さな箪笥たんすが置いてあるだけで、あとは布団を敷けばさほど余裕がなかったから、せいぜい四畳半程度だったと思われる。元はもっと小さい茶室だったところを改築して、祖母の介護用の部屋にしたらしい。  私の記憶の中では、祖母はいつも寝ていた。目を覚ましていることもあったが、布団から出ているのを見た覚えがない。食事の時、上半身を辛そうに起こしているのを何度か見ただけだ。足が悪かった、という意味のことを父が話していたような気もするが、さだかではない。お婆さんがいつも寝ているという事実を、特別なことだと意識したことがなかったから、詳しい話を訊こうとも思わなかった。私の物心がついた頃には、すでに彼女はそういう状態だった。もっと後になって友達の家に遊びに行った時、そこのお婆さんが元気で動き回っているのを目にして、そちらのほうを奇異に感じた覚えがある。

[東野圭吾] __探偵ガリレオ

「……振り向いたところをみれば、夫は仮面をかぶっていた。銀色の金属でこしらえた無表情な仮面だった。感情を隠したいときにいつも使うこの仮面は、夫のやせた頬や頸や眉間にぴったりと合うように作られている。仮面をキラリと光らせて、夫は凶悪な武器を手にとり、じっと眺めた。その武器は──」  そこまで読んだ時、バイクのエンジン音が近づいてくるのを彼は聞いた。レイ?ブラッドベリの『火星年代記』を手に持ったまま、窓の手前に立ち、カーテンを細く開けた。  彼の部屋は北東の角の二階だ。東側の窓から左下方に視線を向けると、北側の道路に突き当たるT字路が見える。  今夜は、バイクは三台だった。しかし人間の数は五人だ。つまり二台は二人乗りをしているわけだ。わざとたてているとしか思えないような聞き苦しいエンジン音を響かせ、彼等はいつもの場所にたむろし始めた。  いつもの場所、とは東側の道路の突き当たりである。そこはバス停になっており、昼間バスを待つ人のためのベンチが置いてあるのだ。バイクの若者たちは、そこに腰かけて、いつまでも大声で馬鹿話をするのが大いに気に入っているようだった。しかも御丁寧なことに、すぐそばに飲み物の自動販売機もある。  暴走族、というのではない。見たところ、ふつうの若者ばかりだった。髪を茶色に染めている少年が二人、パンツを腰の下までずり下ろしている少年が一人。あとの二人は大した特徴がない。一人が髪を肩まで伸ばしていることぐらいか。

[東野圭吾] __天使の耳

午前零時の時報がラジオから聞こえた。 「さて次にお届けするのは、ちょっと前に流行はやった曲です。特に出だしのフレーズは、やたらあちこちで使われていましたよね。では松任谷由実さんの、『リフレインが叫んでる』をどうぞ」  陣内瞬介は報告書を作成していた手を止めると、ラジオのボリュームを上げた。お気に入りの曲だからだ。DJがいったように、彼も最初のフレーズだけはよく覚えていて、曲に合わせて口ずさんだ。  どうしてどうして僕たちは出会ってしまったのだろう 壊れるほど抱きしめた  あとはよく知らない。ハミングでごまかした。 「いい歌だな。何となく心が動かされる」  主任の金沢巡査部長が、陣内の湯のみ茶碗に茶を注ぎながらいった。

[東野圭吾] __予知夢

屋敷の周りにはレンガ作りの高い塀が巡らされていたが、それを乗り越えるのは造作のないことだった。男は車で来ていた。家で使っている軽トラックだ。荷台に上がれば、たやすく塀に足をかけられた。そのままためらわずに侵入する。  敷地は広く、屋敷は大きい。詳しい間取りを男は知らなかった。知っているのは、レミの部屋がどこにあるか、だけだ。しかしそれで十分といえた。  屋敷の明かりはすべて消えている。灯ともっているのは庭をほんのりと照らす常夜灯だけだ。その淡い光を避けて男は移動した。屋敷の南側に出た。こちらにも庭がある。芝生が張ってあり、ゴルフ練習用のネットが隅に設けられていた。屋敷の主あるじはゴルフ好きなのだろう。屋敷の主──すなわちレミの父親だ。  壁にぴったりとくっつけるように物置が据えられていた。背の高い物置だ。スキー板でも難なく入れられるだろう。  男は物置のそばに立って、屋敷を見上げた。すぐ上にバルコニーがある。そこまで行けばレミに会える。  物置の屋根に両手をかけ、懸垂の要領で身体を上げた。足をかけ、屋根に上る。金属の軋きしむ音がしたが、さほど大きくはない。  屋根の上に立つと、バルコニーがすぐ目の前にあった。男は胸の高鳴りを覚えた。あの窓の向こうで、レミは今頃何をしているのだろう。  男はバルコニーの柵に手をかけた。猿のようにぶらさがり、雨樋の金具に足を載せたりして、バルコニーによじ登った。彼は器械体操の経験があった。それが何年ぶりかで役に立った。  部屋のほうを向いた。カーテンがぴったりと閉じられている。

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